会長の立場から-三澤株式会社-

澤昭裕は2008年家業のアパレル企業、三澤株式会社の取締役特別顧問に就任し、2010年5月取締役会長になりました。

三澤では月初めの朝礼の際に全社員へ向けて会長、社長などが話をし、その内容を総務部の方がまとめ、全員に配信していたそうです。その会長の言葉の中でメッセージ性が高いものだけを集めて、亡くなった後の2月に社員に配信したものを会社から提供していただきました。今回会社経営者としての1面を持つ澤昭裕がどんなこと考え、社員に伝えていたのかを知っていただきたく、載せることにしました。

2012年 1月

あと1歩やる。
この辺で良いかという妥協ではなく、そこからもう1歩の意識付け。
例えば物づくりにおいて、あと5円だけ安く作る。
出張に行った時に3店舗まわるところを4店舗まわる。
リサーチやデザインにおいてあとひと工夫する。
このような意識付けをすることにおいて、全社員がひとりづつ実行すれば人数分の成果が得られる。

2012年 4月

粗利を稼ぐために・・・・
粗利を上げる為には売上を上げるか、仕入原価を下げるしかない。
三澤全体で年間400万枚の商品が流通する。1枚5円の仕入原価を下げる努力をしたら2千万が粗利に乗る。
本当に5円安くする方策が出来ているでしょうか?
そういった、たった5円でも粗利が上がれば、賞与などにおいて自分に還元される。
違った面からみると、リスクジャッジにおいても粗利を上げることも可能。
人が作らない時に安く作る、人が買わない時期に安く押える。
そしてシーズンにその商品を売り尽くす。いわゆる利幅を稼ぐ方法。
その逆をやってしまうと粗利は下がるだけの結論となる。
粗利が悪いとは仕事の段取りが悪いに他ならない。

2013年 1月

4回目の年男・年女を迎えた人は新しいことに踏み込むことは難しいので今までのやり方が変えられない為、今までのやり方で今一歩踏み込み120% 量をこなすことを心掛けて欲しい。
4回目をまだ迎えていない一番、脂の乗っている世代は今までのやり方が一番正しいと思っている観点を突き破り、自分が今までチャレンジしたことのないやり方(例えば販路・商品)で飛躍する最後のチャンスなので頑張ってください。
2回目を迎えた世代はまだまだ人生においてスタートポイントなので、今やっていることの足元を固めることに専念してください。

2013年 4月

貸借対照表において会社(特に中小企業)をみる時に重要なのは現預金。
何故なら、いざ銀行が融資するときに現預金があれば返してもらえる。現金なくて在庫ばかりだと引く。
在庫は持てば持つほどキャッシュがなくなっていく。
在庫を減らすということは会社の現金を増やすということ。

繊維卸については物流・金流・商流の流れがある。
商流   商品を仕入れて商品を売る
金流   商流の流れと逆流
物流   商品の流通過程
商品を売りに行って今すぐにお金を払ってくださいの商売ではないから売上が出来る。つまり売掛というもの。  実際はお金を貸していること。
回収を査定の基準に入れていることは、お金を返してもらってなんぼのもの。
金を回していく過程でいかにストックを持っておるかが信用となる。
キャッシュがないと会社は回らないということを常に念頭に入れておくこと。

2013年 11月

調子が悪い時の打破の方法
調子が悪い時はリズムが崩れる。リズムを取り戻す3つの要素。
1.細かい計画を作成する際は悩み考えなどするが、いざ実施する段階では実施することだけに集中する。(途中では悩んだり変えたりしない)
2.メリハリをつける。悪い時はイメージがダウンしたり消極的になる。オンとオフを使い分け両方の世界がお互いを浸潤させないことでリズムを取り戻す
3.笑うこと。職場で調子が悪い時は笑いがなくなる。コミュニケーションも悪くなり、チームワークが崩れる。笑いで明るくしリズムを取り戻す。

2013年 12月

売上もさることながら利益の落ち込みが大きい故、キャッシュの流れ停滞に繋がる。
在庫というのは売っていない商品で、仕入れるのにはお金が必要だが売っていないからお金が入って来ないというダブルパンチ。
正確ではないが計画より約1億くらいの在庫が多い。ということは1億余計にお金がかかっていて、1億入って来るべきお金が入って来ない。
両方で2億のマイナスになる。
在庫を減らすことが今、求められている状況。

2014年 1月

昨年の年頭において今一歩踏み込んで仕事をするという訓示をしたが、今年は現場に出て仕事をするということ。
私自身、昨年ほかの仕事において報告書を書くプロセスで思い出したことは、物を売るのではなく政策を売るという仕事であるが本質は同じ、ユーザーがどのような政策を望んでいるか、どのような段取りで進めて欲しいか、どういう問題がいちばん関心があるか、そういうことがビビッドに報告書に入っていないと見向きもされないということに気がついた。

つまり営業現場においてはお客さんのところに足を運んでいますか、そこから先に行ってますか。そこに買いに来ているお客さんはどのような人か、あるいは売っているお客さんが売っている先まで足を運んでいますか。
現場のさらに現場の奥深くに入っていくという今一歩の踏込みが商品の構成・トレンドの変化の把握・上代設定等を考える契機となる。

MDの人は数字も持たされ各セクションのマネージメントもしなければいけないポジションだがマネージメントに追われて現場に行く時間、あるいは意欲が削がれていく危険がある。
しかし数字を達成していくプロセスにおいては現場に足を運んでいくことは重要なこと。
今年は現場感覚を研磨し、鈍化させないようにしていただきたい。

2014年 4月

中期的な展開をするために小売り部門を始めた。その為にキャッシュや人材が必要となってくる。それを支えるのは本体の卸売業。
本業の問題点は売上利益率。原価をいかに下げるか。在庫をどのように減らし、あるいは在庫を作らないか。

2014年 10月

ここ10年くらいは当社営業マンも価格に左右され、商談も価格中心となってきている。
今後はボリュームゾーンの売り方はもっと苦しくなる。従来の考え方をそろそろ変えて価格に左右されない商品、良い商品だから消費税が上がる上がらないに関係なく買いたいと思ってもらえる商品作りに切り替えていかないと相当、苦労することが予想される。
それらのことを考慮して物作りをしていってください。

こういう状況の中、みなさんに精一杯、時間の限り働いてもらわなければいけないのですがどうしても商品と商品の谷間、あるいは出荷が多い時や少ない時など色んなタイミングで手が空く時がある。
それらを不稼働な人員、不稼働な時間と言いますが、その時は給与は発生するが何ら生産性がない。
また例えば展示場などは常時使用している訳ではないので不稼働な資産(不動産)、もう一つは在庫、これは寝ているだけで金を稼いでくれる訳ではないので単なる不稼働な商品と言います。
これらの稼働していないものを少なくしていくことが重要なポイント。
それぞれの部署で不稼働な時間、不稼働な場所、不稼働な商品がないかを考え、例えば不稼働なスペースを使って不稼働な時間にあたっている人に不稼働な商品を売ってもらうという一石二鳥なことも一つのアイディアです。

部長やSLは不稼働なものを見たら、そこにお金が寝ているというイメージを持ちながら最大限のアイディアを考えて下さい。

2014年 12月

プロフェッショナルとしての意識があるかどうか。
プロフェッショナルとは自分が立てた目標に妥協しないこと。

☆自分自身で立てた数字、自分自身で立てた目標
☆個人の数字・目標が出来ることを前提に自分のチームの人の助けになっていることをやっているか。
☆段々と上に立つ人になるにつれて加味される要件でチームをまとめて全体の数字をあげることが出来ているか。部下を抱えて上手くマネジメントが出来ているか。

自分自身の評価が自分が思っている以上に低かったりする場合もあるが、自分が足りなかったことがないかどうか、自分に妥協した部分がなかったか、自分の周りのことに気をまわした等を肝に銘じていただきたいです。

2015年 1月

会社の組織としてどのようにしていくか。

プロフェッショナルな会社じゃないといけない。新しく生まれ変わっていく過程で、これまでのアマチュアリズム的なものでは、これからの時代やっていけない。
それぞれがまず普通の企業がやっていることは必ずやる、その上で当社はプロフェッショナルとして何を小売りに出せるのかというようなことを考えていく姿勢が必要になる。

プロとしての会社に生まれ変わるために、我々の業界の他の企業がどののようなことをしているのか等を知ってもらう意味で他社の社長さんに来ていただき話を聞く機会を作っていきたいと思っています。

プロの企業になるということは、どういうことなのか。

営業の方などは、これまで売り込んでいく際に価格の競争でやって来たと思いますが、価格の競争はある意味、誰でも出来る訳で、そこで止まっているとプロの企業とは言えない。
プロの企業とは価格でないところで、どういうところを売りにしていけるのかというのが今の時代を生き抜くポイント。

普通の企業がやっていて我社が甘いことは少なくとも業界の標準レベル以上に持っていかなければいけない。
その3つが「品質」 「納期」 「サービス(デザイン・センス)」

「品質」
品質管理はやって当たり前。果たして我社は品質について社内で議論しているだろうか。
マネージメントのひとつとして悪い物が外に出ていかない様になっているかということを考えた時に、普通の企業がやっていることくらいはやらなければいけない。
さらに価格競争ではなく品質で勝負する際に、他の企業以上の品質を保つ仕組みも必要である。
「納期」
この業界に来た時にいちばん驚いたのは納期のいい加減さです。納期が守れない会社とは今後の付き合いを考えていかなければいけないし、逆に得意先に納期が守れなくなり、先方からすれば対三澤が付き合える企業かともなってしまう。

「サービス」
アパレルの企業としての生命線、価格はいくらでも良いのでこういうセンスの物を作って欲しいという様なところと付き合える会社にならなければいけない。
みんなで情報を収集し生かしていくメカニズムを持たなければいけない。

ひとりひとりがプロフェッショナルになるために。
1.やってもいないのに出来ないと言わない。
やる前から出来ないという人間はプロフェッショナルにはなれない。やってみて出来なくても自分が思っていたのに対し8割達成したら、実は上司は6割しか出来ないと思っていたのが8割達成したら期待以上のことをやっている。
当社においては出来ないというのは禁止にしても良いくらいの言葉、必ずやってみますという言葉から入る。
逆に上の人は何でもかんでもやらせるのではなくて、何をやらせるのがいちばん効果的なのか等を選り分けてやらせないといけない。

2.相手の期待以上のことをやる。
様々な世界においてアマでは出来ない、この人ならこの様なパフォーマンスをやってくれるだろうというものに感動するのがプロフェッショナル。
当社においてもそれぞれのポジションで、そこそこ出来れば良いというものではない。
人が期待していること以上のことをやって初めて、あいつなかなか出来るという評価を得られる。
例えば10型売りに行った場合、どこの会社も持って来てる同じような物を持って来ている期待くらいしか応えられてないとすると10型とも価格で勝てない限り負けます。
そうではなくて10型中1型でもセンスの良い物、あるいは相手が欲しかった物であれば他の9型も売れる。
ほかにアベレージ的なことしか出来なくても、1つでも図抜けていればアベレージでやることもみんな信頼されていきます。
逆に1つでも人より劣るようなことがあって、それを直そうとする姿勢がみえないケースは他の9つが標準出来ていてもダメな奴というレッテルを貼られます。
プロフェッショナルとはひとつでも良いから相手の期待以上のことをやる。

3.他の人よりも一歩多く歩く、前に出る。
皆と同じ範囲でリサーチをする、同じ範囲で新規に飛び込むのはプロフェッショナルがやることではない。他の人がやっていることに加えてあとひとつ回る、あとひとつ情報を集める、あとひとつ売りに行くということを本当にやっているか。
人は歳を重ねるとこれまでのやり方を続けることになるが、例えば普段歩いていた歩き方をやっていると少しづつスピードが遅れたり、よれたりするもの。
逆に言えば歳を取れば取るほど、前と同じように歩くためにも努力がより必要となってくる。
その時にまわりの同じような歳の人よりも一歩先に行く、あるいは一歩多く歩くことを意識することによってプロフェッショナルの能力が維持できる。
若い人は普通に歩いていても他の人より1歩も2歩も先に出ている若者でないと意味がない。

今年はこれら3つのことをプロフェッショナルになるために心掛けてください。

2015年 4月

目標数字の為にあらゆる工夫をする。
成長していく企業の必要条件   営業利益率3%
5%の営業利益率は日本においては優良企業
部長・課長は自分たちのチームをどういう風に動かすかを意識統一していくことが重要なこと。
昨夜のサッカーの新生日本代表
新監督になり非常にわかりやすい戦略となり結果も出た。ハーフラインを越えてからの素早い縦パスでシンプルに攻撃を展開する、そうでないと怒る。それぞれのポジションの人間にどのように動くのか、それをミリ単位で練習の時から刷り込ませることをやっている。
ボワンとした数字だけの目標を与えても、実際どのように動いたらよいかが解らないとチームはなかなか動かない。

ここ5・6年に比べると社員数が2割、人が減ったが売上はそれほど落ちていない。
ということは少ない人数で売上をひとりづつが、より上げているということ。
今後3% 5%の営業利益率を上げていくには、ひとりひとりが無駄な動きがない様にしていかなければいけない。

ちょうど期初なので、これから52週間、何をやるのか。1週単位でこの時期にはこういう仕込みをやる、こういうリサーチをする等の仕事の段取りを頭に描くだけではなくみんなにコミュニケートする。
部長・課長は自分の具体的戦略、あなたにはこういう役割をこういうタイミングでやって欲しいというコミュニケーションをひとりづつやっていただきたい。

2015年 7月

先行不透明で基調回復が見込めるほどのマーケットではない業界ですが、気持ち的に暗くならないように。鬱的要因があると、どうしても顔の表情に出ます。
わざと笑顔を作ってください。
苦しい状況等でも笑顔を作ると、笑顔の筋肉が頭の神経に繋がっているので気持ちが明るくなります。

2015年 8月

競争を煽り立てることをしないと会社はまわっていかないが、言い過ぎると東芝の様に不正に走ったりします。ではおっとりしていれば良いのかというと日立みたいに万年2位でジリ貧になっていくものです。
この辺の塩梅は永遠の課題ですが、当社もこれまで色んな改革をして来た訳ですがちょうどそういうことが定着したり、あるいは副作用が出たりで混ざった状況になっています。
それぞれの事業部長がその部のキャラ、あるいは構成人員を考えて人事的にマネージメントしていく、チームとして動かしていくということを、どうやって実現させていくかが問われる現在です。これから秋に向かって予算の数字が増えていく中でのプレッシャーで全体的にギスギスした雰囲気になることもあり得る訳です。そういう時はベテランの人はチームの潤滑油になってもらい、ムードメーカーにもなってもらうことが必要ですし、逆に何となく数字がまとまって来た時に若手の人が、こんなんで満足していけないと刺激を与えてもらう人も出て来て欲しい。
現場現場によって違うとは思いますが、マネージメントが上手に出来たところが数字もついて来るという風になって欲しいと思います。

2015年 12月

今年 日本中を沸かせたラグビー日本代表監督のエディ・ジョーンズのインタビューが読売新聞に載っていました。
チームと個人をどのようにバランスに乗せていくのかという話で、チームとして強くなる・機能させていくのは、やはりひとりひとりの個の力を持ち合わせていないといけない。

当社においてもそれぞれの事業部が個の組織とすると、それぞれが頑張ってもらわないと会社全体が機能しない。

一方で事業部の中で言えば営業・企画・商管のひとりづつの力が合わさなければいけない、個人の力が伸びて来ないと事業部としての力にならない。

個人個人をみてみると人間皆パーフェクトではないので、考え方として欠点を直すのではなく、それぞれが持っている強みを伸ばしてあげることが肝要です。
それぞれの事業部長は各々が持っている強みに注意を向けてチームの力を上げていってください。
個人を育てる過程において欠点を非難する、直すのではなく、強みを生かす使い方・育て方を心掛けてください。

このあと、それぞれの事業部の報告がありますが、成績が9割に満たなかったところは反省するのではなく、自分の事業部が他と違ってどこが強いのか、自分たちの強みをもう一度掘り起こしてそこを磨くような形でこれからの現物販売や春物受注に邁進していって欲しいと思います。

それが会社全体の3月の決算に結びつくと思うので是非、力を発揮してくれることを望んでいます。